わたしたちは、この世に生まれてからずっと、さまざまな制約や抑圧の中で生きてきました。
自分の本心とは無関係な価値観を押し付けられ、ときにそれを「自分のもの」と思い込んでしまうほどに。たとえば、親からは「医者や弁護士になれば成功する」「公務員になれば安定だ」「家業を継いでほしい」といった価値観を受け取り、学校や社会からも、多くの「常識」や「正しさ」を教え込まれてきました。
また、親の心理状態──たとえば、親が神経質だったり、暴力的だったりした場合、その影響を子どもが受け継いでしまうことも少なくありません。さらに、わたしたちは過去世からの影響さえも背負っているのです。
そのようにして、いまのわたしたちは、本来の自分ではない“誰か”を演じながら生きているのかもしれません。けれど、多くの人はそのことに気づかず、他者から与えられた価値観で作り上げられた“偽りの自分”を「これが本当の自分だ」と信じ込んでしまっているのです。
さらに言えば、わたしたちは、いわゆる「生まれる前の世界」で、次の人生で何を学び、どのように生きていくか──神との合意のもとに“青写真”を描いて生まれてきた存在です。しかし、その記憶もまた、社会の影響によりすっかり忘れ去られてしまっています。
本来あるべき自分の姿が、すっかり覆い隠されてしまっているのです。
そんなとき、ふと湧き上がる、理由のわからない痛みや苦しみ、悲しみ…。
それらは、「本来の自分」から離れてしまっているというサインにほかなりません。まずは、そのことに気づくことが大切です。
しかし、現実には多くの人が、そのまま気づかずに人生を終えてしまいます。
人によっては、心の中に蓄積された痛みや苦しみが限界を超え、心の病や身体の病となって現れてくることさえあります。
そうした過去の痛みや悲しみは、不安や心配、恐れといった感情を生み出し、私たちの思考パターンの中に巧妙に組み込まれていきます。
そして、それがいつしかネガティブな思考となって現れ、過去を否定しようと未来を過剰に計画したり、不安を回避するための生き方を選んでしまったりするのです。
結局のところ、わたしたちの思考の多くは「過去」から来ています。
だからこそ、「本来の自分」に還るためには、過去や未来という幻想に振り回されないことが大切なのです。
では、どうすればよいのでしょうか。
ーそれは、「今この瞬間」に在ること。
それこそが、もっともシンプルで、もっともパワフルな方法なのです。
わたしたちは、何かを考えているとき、無意識のうちに過去や未来の思考の中に入り込んでしまいます。
ここで言う「思考」とは、日々の計画や仕事の段取りといった実用的な思考のことではありません。
問題なのは、過去と未来に根差したネガティブな思考、あるいは、幾度もの転生の中で無意識に染みついたエゴ的な思い込みや恐れに基づくパターンです。
禅の教えでは、よく「バカになれ」「一切計らうな」「無心であれ」と言われます。
これは、「ノーマインド(無心)」の境地を指しています。
「無心」とは、頭で考えることも、心で思い悩むこともすべて手放し、
思考やエゴ、信念体系、執着、批判、判断、計画、策略──それらから完全に自由になり、ただ「今、この瞬間」に在るということです。
わたしは、この「無心」こそが、もっとも強く、もっとも自由なあり方だと感じています。
なぜなら、本当に無心になったとき、わたしたちは自己の本質(仏性・本源)と完全に一体となり、愛と叡智に満たされるからです。
それはまさに、「神にすべてをゆだねている」状態なのです。
だからこそ、「今この瞬間」に在ることは、自己を解放し、自由を得るための唯一の近道だと言えるでしょう。
なにも考えずに、リラックスして、ただ「今、ここ」に在りましょう。
そこに、真の自由と癒し、そして本来の自分との出会いが待っています。
